静岡市の由比の特産と言えば、「サクラエビ」。今、春漁が行われています。最近、そのサクラエビに関して、これまでの常識を覆す、驚きの研究に成功したんです。
日本では駿河湾でしか水揚げされない「サクラエビ」。静岡を代表する特産品ですが、大体はかき揚げで食べたりという方が多いのではないでしょうか?
しかし、由比港漁業協同組合の皆さんがこのサクラエビの魅力をもっと大勢の人に知ってもらいたいと、始まったこの研究。
実は、桜えびを踊り食いで食べてもらおうというものだったのです。

しかし獲った桜えびを生かすというのは、不可能と言われていて、これまで挑戦しようという人はいなかったんです。
今回、その不可能と言われていたことに挑んだのです!
桜えびが水揚げされる由比漁港に、3年前ある研究所が設立されました。その名も「活き桜えび研究所」。こちらで、大変珍しい、生きている桜えびが見られるというのです。

そう、ここでは生きたサクラエビをみることができるのです!
そしてこれが、3年の歳月をかけて作られた、桜えびを生かしておくことができる装置なんです。

開発したのは、石巻専修大学の高崎みつる教授。きっかけは以前から知り合いだった漁師、原剛さんの「やっぱり漁師をやっている以上は、水揚げされた状態により近い状態の桜えびを食べてもらいたい、提供したいというのが、漁師の本能。」
という一言だったのです。


それを聞いた高崎先生は「そんなに生かすのが難しいんだったら、我々研究者って挑戦したいじゃないですか、やってみたい・・・」と思い実現したのです。


高崎先生は
「最初は玉砕の一年。玉砕失敗の一年、行けそうだという感触を掴んで、本格的にできると思ったのに、うまくいかなかった半年、それから改良を加えて今。そんな3つのフェーズかな。」
とこの研究を振り返ります。
様々な困難を乗り越え、これが、研究の成果です!

滅多に見られない生きている桜えび。桜えびって、生きている時は桜色ではなく、透明なんですよ!
そもそも、桜えび漁は2隻の船で協力して行われます。仕掛けた網に入った大量の桜えびをポンプを使って吸い上げるんです。元々デリケートな生き物であるため、こうした段階ですぐに弱ってしまっていたんです。

そこで今回は、注意を払って桜えびを大事に持ち帰ったのですが、それもすぐに死んでしまったのです。
そこには、もう一つ、長時間生かしておくことができない、大きな問題があったのです。

研究によってわかったことは、水槽のなかに多くの桜えびを入れると、ストレスを感じてしまい、桜えび自身が非常に多くのアンモニアを出すということでした。そのアンモニアの影響で死んでしまうということなんです。水揚げ後も長く生かすポイントは、アンモニアの除去にありました。


何度も試行錯誤を繰り返し、完成したシステム。硝化細菌という微生物を使って、桜えびが出す大量のアンモニアを分解することに成功したんです。この「おが屑」にその微生物がいるんですよ。
こうした研究の結果、水揚げした後も桜えびを生かしておくことができるようになりました。
地元漁師もこの成果に驚いていました。

ここで、少しおさらいをしましょう。
死んでしまった桜えびがいた水槽のアンモニア濃度は、下水道の濃度レベルよりさらに高いことがわかったんです。水槽の中で、お互いがくっついた状態でいると、ストレスを感じてしまい、桜えび自身がアンモニアを発するんです。
しかし、原因が分かったからと言って、すぐに解決はできなかったのす。
高崎教授によると、もともと、淡水を綺麗にする技術はとても進んでいるのですが、海水を綺麗にする研究は、あまり例が無くほとんど行われていなかったので、参考にできるものがなかったとそうなんです。

そして今回完成した海水を綺麗にするシステムは、簡単に言うと微生物の「硝化細菌」を使って桜えびにとって有害なアンモニアを分解する仕組みを作ったのですが、海水は環境の変化に左右されやすく、塩分濃度が季節、日ごとに変わってしまうんです。そうすると、硝化細菌(微生物)が一定の働きをしてくれず、結果、アンモニアがうまく分解されずに桜えびが死んでしまうという苦労があったのです。
しかしこの苦労のおかげで、これまで不可能と考えられていた「桜えびの躍り食い」が可能になりました。取材でお邪魔した漁師さんは、今まで、桜えびの躍り食いというのは、ある意味漁師の特権だったと言っていました。
しかし、この研究の成果で我々も食べることができるようになったのです。こうした動きに、いち早く反応し、お店の新メニューとして出すところがあったんです。
桜えびが入ったタンクを載せ、由比漁港を出発した車が向かう先は、JR静岡駅前にあるホテルセンチュリー静岡です。

由比漁港からホテルまでは順調に行ってもおよそ40分かかります。少しの渋滞でも桜えびにとって大きなダメージを与えてしまうんです。
このタンクにはアンモニアを除去する装置が付いていません。そのため、一刻も早くその環境が整った場所に移してあげる必要があるのです。桜えびを店の水槽に移すこの時が原さんが一番緊張場面。


水槽に移し、元気に泳ぐ桜えびを見て、ようやく原さんも安心できるのです。
こちらのお店に設置されている水槽は、高崎教授が開発したアンモニア分解システムの環境が整ったものなんです。研究の成果が凝縮されているんです。ちなみにこの水槽、日本で3台しかありません。
日本料理・花凜(かりん)では、3月30日より、新メニューとして「活き桜えびの踊り」を出しました。


食べる時は、出汁で割ったポン酢をかけるんです。
料理長は
「かき揚げですとか、そういうのは出していましたけど、こんな様に踊りなんていうのは無いですから。ものすごい、僕ら料理人にとっても幸せなことですよね。こういうのが出せると言うことは。」と語ってくれました。

今回の研究は、静岡の特産品、桜えびの新たな可能性を引き出してくれました。
由比港漁協の原さんが、3年前、無理だと分かっていても、高崎教授に相談したことが、ここにきて実を結んだんです。
高崎教授いわく、日本全国で食べられるようになるのではなく、あくまで静岡に来てもらって、富士山を眺め、そして桜えびを堪能してもらいたいとのことでした。