Vol.34 藤江家住宅(森町城下) 広い間口に豪商の風情
江戸時代に秋葉街道の宿場町として栄えた森町。中心部から約2キロ離れた城下地区の藤江家住宅は当時の風情を感じさせる。1863年(文久3年)の建築で、街道の街並みに特徴的な軒高を低く抑えた「ずし2階」構造。格子や落とし込み障子のバランスが良く、広い間口は名主ならではの表情を見せる。
藤江家は横須賀藩御用達も務めた豪商で、戦前までしょうゆやみそを製造していた。現在でも当時の大きなたるやかめなどが土間に残されている。戦前に嫁いできた藤江みち子さん(92)は「若い従業員がたくさんいて、本当に大変でした」と笑いながら振り返る。
長い年月を耐え抜いた住宅も現在は老朽化が著しく、高齢のみち子さんが1人で管理している。同町の1級建築士花島久治さんは「江戸時代の町屋の建築様式をこれほど残している建物は旧東海道でもあまりない。ぜひ後世に伝えていきたい建物だ」と強調する。(2008年8月7日 静岡新聞朝刊掲載)

