Vol.11 如是庵(浜松市北区) 随所に“昭和の粋”
浜松市北区細江町の中心街を北へ約2キロ。大通り脇の山中腹に古風な山荘がたたずむ。周辺では珍しい昭和初期の別荘で、今は自然食の料亭・如是庵として利用される。
「一代で財を築いた地元呉服屋の森口正吉さんが、昭和7年に木曽産の木材のみで建てたと聞きます。山の傾斜を利用した『がけ造り』が特徴的で、敷地内にお堂を建てるなど腕の良い宮大工の手によるものでしょう。保管する古物や家具から仏教美術に興味を持った所有者の趣向が伝わってきます」
現在所有する孫のとり子さん(68)に代わり、知人のグラフィックデザイナー上嶋裕志さん(56)が説明する。
「特注の屋根瓦や畳、ふすま。どれも貴重ですが、ほぼ1人で続ける管理は大変そうです。漆を使った机や器に厳選した食材。建物を含めすべてがこだわりの空間です」
春になると、山林の中で満開となるヤマブキやサクラが客を迎え入れる。昭和の粋人の心のこもった“庵”が、優雅なひとときと景観を提供する。(2008年2月14日掲載)
